10月21日(土)の夜、V・ファーレン長崎のホームスタジアムであるトランスコスモススタジアム長崎に約1万3千人の観衆が集まった。天候に恵まれたとは決して言えない中で、J1への昇格を目指す3位長崎と1年でのJ1への復帰を目指す4位名古屋グランパスという大一番の対戦に至るまでを簡単ではあるが振り返りつつ、引き続き人材を募集している長崎の現状を分析したいと思う。

▼訪れた経営危機とその深刻さ
経営状況が望ましくないと、2017年の2月に日本プロサッカーリーグの監査を受けて社長及び常勤役員が全て辞任をするという大きなトピックがあった。そして早ければ4月には社員への給料が支払えないという資金繰りの状況が次々と明らかになった。1億2千万円の赤字と約3億円の累積赤字を出す状況は窮地そのものであり、長崎サポーター以外の他クラブサポーターにも激震を与えた。


一方でチームは毎年のように、そして長崎も例外ではなく他の地方クラブと同じように昨シーズンから主力を含めて大幅な入れ替えをしていたが、5年目の高木監督を中心にチームを作り上げ、不安な経営状況とは違い勝利を重ねていた。

▼現れた救世主ジャパネットと髙田明氏
揺れるV・ファーレン長崎に救世主として2社が手をあげた。一つが英会話で有名な「NOVAホールディングス」ともう一つが地元・長崎の企業でありスポンサーの一つであった「ジャパネットホールディングス」。二転三転した結果、ジャパネットホールディングスが経営を再建することとなった。そして、株主総会と取締役会を経て、髙田明氏が社長に就任することとなった。


ジャパネットホールディングスのグループ会社として再建することとなった新生V・ファーレン長崎。これまで地方の中小企業だった労働環境も少しずつ改善されることとなった。

地方クラブがこういった職場環境の改善を優先させる例は少ない。だが、高田明社長は社長就任時に「人が足りないのなら、そこに投資も行なう。その上で、みんなで知恵を出し合って効率性を高めたい」と語っており、これまでのクラブで見られた、多くの業務を少人数のスタッフでこなす「仕事量」重視の運営スタイルから、業務の「質や効率性」重視への転換が進んでいくはずだ。

 そういった方向性の一端はクラブ事務局の様子からもうかがい知ることができる。以前、大量の備品や資料の山に埋もれていた事務局は、断捨離を敢行した結果、見違えるように広くなり事務局内のムードも明るいものへと変化した。

 同時に、出入り口をはじめ数ヶ所にセキュリティロックが導入され、情報管理や保安面へも配慮するなどプロクラブ事務局としての質は確実に高まっている。今後もジャパネットグループのノウハウやスタイルを導入しながら、こういった質や効率性の向上は図られていくはずだ。

いくつかの地方クラブの方々と話す機会がある中で、その多くは「仕事量」重視の運営スタイルであることがほとんどだ。そういった中で質を求めるようになった長崎は一つ階段を登ったと思う。

並行して人材募集も行い、着実にクラブは再生の道を進んでいた。

4月の定時株主総会でジャパネットホールディングスの高田旭人代表取締役社長が「既存のスタッフ、ジャパネットからの選抜する社員、新たに採用する社員で運営を行なっていきたい」と語ったとおり組織体制と人事についても大きく変わった。

 YKKグループで辣腕をふるった高橋章二氏や、4月までツエーゲン金沢の運営に尽力した由井昌秋氏を取締役として迎えいれ、定時株主総会翌日からはクラブ運営メンバーの一般募集も開始。結果、既存スタッフやジャパネットグループ内からの社員とあわせてスタッフの人員は大幅に増加された。

 むろん、単純に頭数を増やしたというわけではない。既存スタッフにもあらためて適性試験を実施し、関係者が「どこに出しても恥ずかしくない」と評するジャパネットの人事制度やノー残業デーを導入するなど職場環境の改善も推し進め、クラブを意欲的に働ける場にしようとしている。

▼大きな試練「入場者数水増し」問題
順風満帆に見えた7月に突然、嵐は訪れた。ジャパネットが引き継ぐ前の体制時にホームゲームでの来場者の人数を上乗せしていた問題が発覚し、Jリーグより制裁金等が課されることとなった。

Jリーグクラブが大切にしていることとして、勝利数や順位がチームの評価ポイントであれば、経営や事業の評価ポイントは売上規模(黒字)と来場者数である。そして長崎は売上と来場者数を数年に渡って偽ってきた。来場者数はスポンサー営業へのPRポイントであることを考慮すると意図的に水増しを繰り返してきた可能性はあるがクラブは否定しているが、長崎という会社とスポンサーとの間から多少なり信頼を奪うには十分すぎる出来事であった。

もちろんこれらはジャパネットホールディングが引き継ぐ前の出来事でありなんら責任のないことではあるが、髙田社長をはじめ、現体制が責任を受け止める形で収束させた。

▼V・ファーレン長崎のチャレンジ
経営危機と水増し問題という重たい問題を抱えながら長崎は少しずつチャレンジし始めた。もちろん運営に関わっていたスタッフが多数離職し、運営を安定化させるまで時間がかかった影響はあったかもしれないが、髙田社長が目指す姿になり始めている。

髙田 クラブ経営も企業経営と一緒で、透明性を持って採算の取れるクラブを目指していきます。そして、県民が寝ても覚めても気になってしまうようなクラブにしたいですね。

今はJ2で本当に頑張っています。ただ、選手の想いや熱心なサポーターの存在を考えると、やはりJ1を目指すべきでしょう。私も30年ほど経営をしてきましたが、不可能に思えることも、ひとつの目標に向かった瞬間に可能になるといったことを何度も経験してきました。

今は苦しい状況です。でも、“雨降って地固まる”じゃないですけど、ここからJ1昇格を目指して最後にみんなで喜べたら最高じゃないですか。

ジャパネットデーとして開催した6月11日の長崎対熊本戦は4,618人だったが、10月21日に開催されたジャパネットデー「長崎対名古屋」は1万3千人近い来場者が訪れた。もちろんコンスタントに1万人を集められるようになった訳ではないが、地道な活動とジャパネットのパワーの使い方を学び、クラブとしての成長がうかがい知れる試合となった。

もちろん経営や事業が成長している間にチームは着実に勝ち星を重ねて、J1へ昇格できる順位につけていた。J1昇格への大一番である名古屋グランパスとの一戦に1万人を超すサポーターが配られたTシャツを着て後押しを受けた選手たちは堅い守備と持ち前の走力で諦めずに走り続け、試合終盤に追いつき、3位をキープすることができた。

経営とチームはよく車の両輪と言われるように、どちらかだけが優れていてもクラブとしては成り立たない。今のV・ファーレン長崎は髙田社長が思い描く姿に近づくように両輪が適した大きさで「前へ」進んでいる。

▼V・ファーレン長崎求人情報と名古屋グランパス求人情報
着実に成長し、そして来シーズンJ1で戦う可能性があるクラブという非常に面白い状況に置かれているのがV・ファーレン長崎。
幸運にも引き続き、人材を募集している状況なので、興味がある方はぜひ申し込んで欲しいと思う。


そして偶然かJ1復帰を目指す名古屋グランパスもスタッフを募集している。
こちらは10月25日締め切りとなっているので気をつけて欲しい。


ジャパネットグループの一員となったV・ファーレン長崎とトヨタグループの一員である名古屋グランパス。市民クラブの隆盛が昨今のJクラブのトレンドでしたが、新しい潮流として特定企業に属するクラブの運営方法も見直されているのかもしれません。ぜひどちらのクラブも来年はJ1で顔を合わせ、新しい旋風をJリーグに吹かせて欲しいと思います。その一員になりたい方はぜひ、応募を!