V・ファーレン長崎 J1昇格と経営面での課題(求人掲載中)

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11月11日に行われたJ2リーグ第41節の結果を持って、V・ファーレン長崎が初のJ1(ゼイワン)昇格を決めました。J1に向けて、特に経営面での課題を改めてまとめてみたいと思います。

J1とJ2ではクラブを運営する規模が大きく変化します。収入ももちろん増えますが、選手獲得費用や来場者数増加に伴う試合にかかる費用も増えるためその見通しを立てることは経験がないクラブには非常に難しいことです。クラブライセンスの観点では2016シーズンは赤字となっており、見通しの難しい2018シーズンの売り上げを考慮すると3年連続赤字にはできないため、おそらく2017シーズンは親会社のジャパネットと協力し、何らかの形で黒字にすることでしょう。(2015シーズンは黒字決算のため2017シーズンが仮に赤字決算でもクラブライセンス上は問題なし)

・経営規模

まずはV・ファーレン長崎の経営規模ですが、2016シーズンは収益が約7.5億円に対し、費用が約8.8億円となっています。大幅な赤字であることはすでに2017シーズン開幕前から様々な記事で話題になっていたので割愛しますが、2015シーズンも収益及び費用共に約8.9億円でしたのでクラブの規模感としては9億円に届かない状況となっています。
J2において10億円を超えると、上位争いすなわち昇格争いに加わることができる水準になります。長崎は10億は超えていないものの、10億を超えるクラブと対等に渡り合い、J1昇格の切符を掴むことができました。

・J1の規模感

一方でJ1のクラブの経営規模は上は50億を超えるクラブがある一方で最低水準はヴァンフォーレ甲府の約15億円となります。J1で戦うには少なくとも15億を目安に規模を拡大していく必要がありそうです。ただ甲府は15億円の規模で継続してJ1に残り続けており、それ以上の規模のクラブがJ2に降格していることを考慮すると、15億を越えれば安泰という訳ではないのでお金の使い道(質)も大切な要素かと思われます。

・過去の初昇格クラブとの比較

初めてJ1に昇格したクラブが実際どの程度経営規模が変わるのかいくつかのクラブを数字で追ってみたいと思います。
まずは2014シーズンに昇格を果たし2015シーズンをJ1で戦った松本山雅FCから見ていきます。
(2014年)収益:約11.8億円、費用:約12.0億円
(2015年)収益:約21.5億円、費用:約17.8億円
参考:Jクラブ個別経営情報開示資料

実に10億円近く収益が増えております。費用も5.8億円程度増えていますが、4億円近く利益を出し、1.5億円の税金を支払っています。2015シーズン、松本は成績が残念ながら伴わず、J2に降格しました。もし4億円を選手の強化費に充てていれば違った結果になったかもしれないと思うサポーターやスポンサーがいてもおかしくはありません。
実際にファジアーノ岡山の木村社長もインタビューで下記のように答えています。
黒字というのは「経営の安定」ということ以上に「税金を払う」という意味があって、それは必ずしもファンやサポーターの皆さんが望んでいることではないということです。地域のプロスポーツクラブというものは、地域の皆さまからのお金で成り立っているわけです。これはあまり言っちゃいけないことですが、債務超過にならない範囲で黒字と赤字を繰り返しながら、皆さまから頂いたお金は税金を払うよりも余さずチーム強化費にまわす、ということがわれわれに求められることです。
これが地元自治体への税金なら話は全く違いますが、クラブの法人税は国に支払われます。例えば、われわれは現在12億円の収入ですが、黒字にして3000万円の法人税を払うのなら「そのお金で点取り屋を獲得してよ」とファンは思うのではないでしょうか。もちろん、債務超過は論外ですが。
続いて、2013シーズンに昇格プレーオフからJ1に昇格した徳島ヴォルティスです。
(2013年)収益:約12.1億円、費用:約11.5億円
(2014年)収益:約21億円、費用:約17億円
松本とほぼ同じように10億円近く収益を増やし、こちらも最終的に4億円近くの利益を計上しています。同じく1年での降格という道を辿っています。
3つ目は2011シーズンにJ1昇格を果たし、2012年以降継続してJ1で戦い続けているサガン鳥栖です。
(2011年)収益:約6.9億円、費用:約8.3億円
(2012年)収益:約14.5億円、費用:約13.6億円
こちらは約7.5億円ほど収益を増やし、大幅に利益を出さず、J1残留も成功しています。
参考までですが、湘南も2014年に復帰を決め、2015年にJ1で残留した時は11億円から15億円へ拡大し、大幅に利益を出していません。
どのクラブも15億円近くの収益までJ1に昇格すると達成してきました。おそらく長崎もこの15億円という数字はそこまで難しい数字ではないことでしょう。一方で残留できるかどうかは別として、過剰に利益を出さないように「上手にお金を使う」ことがもう一つの観点と言えるでしょう。

・何にお金を使うか

前述の岡山の木村社長のコメントではお金を余らせないように「チームの強化費」に使うことが大事と答えていました。チームの強化費にお金を使えば、そのだけ勝てる確率も上がり、ひいてはJ1残留の可能性も上がります。短期的にはより良い選手を雇うことでJ1で戦い続けることが経営として正しいように思います。一方で中長期的な視点で考えると選手にお金を使うこと以外も大切な要素だと思います。
プロ野球のDeNAベイスターズの前社長である池田氏の著書「空気の作り方」でも記載が下記のようにあります。
「投資してチームを強くすることで経営を健全化させる」のではなく、「まずは経営を健全化させ、その後にチームに投資し、経営とチームの好循環を生む」のです。

池田 純
幻冬舎
2016-08-30


「DeNAベイスターズ躍進の原動力に意外な存在」の記事においても未来の選手やファンである子供達にキャップ(帽子)を配布する活動にお金を使うなど、チーム以外にも投資していく動きは参考になります。
実際に長崎の高田社長もコメントで下記のように述べています。
この間も佐世保から諫早に行くときに、旗がはためいていた。500本作ったんですよ。長崎空港とかJRにも交渉している。アウェーの方が長崎に来たときに、V・ファーレンを感じるものが少ない。これは旗を立てようと。先々は2000本、3000本と立てていくんですけども。とりあえずは500本立てようと。気付かれると思いますよ。テレビでの応援番組も全局でやった。ジャパネットがスポンサーになって、テレビ局さんから番組の枠を買い、長崎の民放4局をリレーする企画をやった。ジャパネットのメディア戦略担当と相談して、各局の社長さんたちに、枠をできるだけ廉価で提携してもらって。ジャパネットも制作クルーに入ってもらって、タレントさんに全部お願いして、あれだけの番組ができた。長崎の皆さんに、V・ファーレンの思いを伝えたい。この1カ月間は啓発を一生懸命考えましたから。県民の皆さんに少し、分かってもらえたかなと。
おそらく、高田社長もJ1に昇格し、チームへの投資が必要だと感じる一方で、地道な告知活動などにも投資していくことでしょう。
岡山の木村社長もJ2に昇格した頃は、チームが負ける前提に立ち、チームよりもお客様にいかに来てもらい、楽しんでもらうかということに注力していました。
ただ、J2に昇格した当時の岡山にしても、DeNAベイスターズにおいても下部リーグに降格する心配がなかったため、どれだけ負けても良いという状況だったことは大きな違いです。せっかくJ1に昇格してもすぐにJ2に降格してはクラブを取り巻く環境はよくなりません。(J2に降格してもDAZNとの契約に伴う援助資金でJ1に戻りやすくなったことは長崎にとって追い風かもしれません)

・V・ファーレン長崎の求人

引き続き、長崎は求人を掲載しており、人材を募集しているようです。
J1に昇格し、会社としてやるべきことはたくさんあることでしょう。
そういった中でクラブのチャレンジを共にできることはまたとない機会だと思います。
ぜひこの機会に求人に応募し、クラブスタッフとして採用され、V・ファーレン長崎をより良いものにしていきませんか?
求人情報はこちらを参照ください。

求人に応募されない方も、クラブによるのぼりやポスターの掲出活動へ協力するだけでも少しずつですが県民にV・ファーレン長崎というクラブが認知され、愛されるクラブになると思います。

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